2010/09/28記事修正。minoriのIPブロックに至る経緯について(太字部分)

本日、英語版美少女ゲームのDL販売を手がける
MangaGamerによって、
minoriが制作した美少女ゲーム、『ef』の英語版が、発売されることが明らかになりました。翻訳を担当するのは
No Name Losers。いわゆる「ファンサブグループ」です。
日本国外の美少女ゲーム関連ニュースに興味がある人にとっては、minoriの話題はお馴染みかもしれませんが、今回はそうでない人にも分かるように、その背景についての説明も加えつつ、これまでのいきさつを書いていこうと思います。何故かというと、minoriのケースには、最近の(英語圏での)美少女ゲーム事情を語る上では避けて通れない2つの問題、いわゆるファンサブ問題と、『
レイプレイ事件』に端を発した表現規制の問題が絡んでいるからです。
1.最近の英語圏の美少女ゲーム事情についてあまり知られてないとは思いますが、ここ1、2年、英語圏の美少女ゲーム市場は過去最高の盛り上がりを見せています。
ほんの数年前までは、日本の美少女ゲームの英語版を正規に販売しているメーカーは(他社の撤退もあり、)1社(
JAST USA)のみで、特定のメーカーの作品が年に1、2本リリースされるのみといった状況が続いていたのですが、
2008年に日本の美少女ゲームメーカーの出資するMangaGamerが参入し、英語版の販売会社にタイトルを提供するメーカーと、英語版でリリースされるタイトルの数は徐々に増加していくようになりました。
(供給の増加に売り上げが伴っているのかまでは判りませんが、)今回のminoriの海外市場への参入は、そんな状況下での出来事だった訳です。
2.美少女ゲームのファンサブサイトとminoriの動きについてファンサブというと、まず思い浮かぶのはアニメでしょうが、美少女ゲームにも存在します。(ノベルゲームの場合、テキストを書き換えるので、正確にはファンサブではないかもしれませんが、便宜上こう書きます。)無論、美少女ゲームのテキストというのは、アニメのセリフの比でなく複雑かつ膨大なので、放映直後に「現物」が出回るアニメとは異なり、作業には長い年月が必要です。このため、最終的に翻訳が完成する作品は、(日本で発売されるタイトル数からすれば、)ごく僅かというのが実態です。
ただ、幸か不幸か、minoriは海外でも熱心なファンに恵まれます。それが
No Name Losers(以降は「NNL」と書きます)、今回晴れて公式のパートナーとなったファンサブグループです。
NNLは、主にアニメ作品のファンサブを作成するグループだったのですが、minoriの2作目にあたる『Wind』に惚れ込み、同作品の英訳パッチを作成しました。この当時、minoriとNNLとの間でやりとりがあったのかは不明ですが、少なくとも、第3者にもわかるような形での出来事はありませんでした。(当時はまだ、表現規制の問題もネット上では大きな話題になっておらず、美少女ゲーム全編の英訳というのが珍しかった事もあるのかもしれません。)
時は流れて2009年、いわゆる『レイプレイ事件』が発生し、これを受けてかminoriは日本以外のIPによる、公式サイトへのアクセスをブロックするという措置を行ないました。この事は、日本でもかなり話題になったので、ご存知の方も多いと思います。
一方でNNLはminoriの最新作、『ef』の英訳版の公開を企てていました。
実は彼らはWindの英訳パッチを公開した時に、正規品の購入を(使用のための)条件としたのですが、この試みは失敗し、ほぼ全員が不正なユーザーだった事が明らかになっただけという事件がありました。そこで(どういうわけか)『ef』については、ゲーム本体そのものを配布してしまおうという暴挙に出ようとしたわけです。
(また彼らは、上記のminoriによるIPブロックをひきあいに、この行為を正当化しようとしました)そして2010年4月、minoriは、美少女ゲームの翻訳プロジェクトをまとめているWikiに掲載されている同社の作品を、
自らの手で削除します。minoriはその理由として、著作権の侵害に加え、日本国外の倫理審査をパスしていない作品が流布してしまうことのリスクを挙げています。
この時のminoriの行動が突然かつ強硬なものだったため、多くの人は、minoriは国外で作品を展開する気はないのだろうと思いました。(実際、この時の日本国外からアクセスした場合のminoriのWebサイトは、NNLに対する声明が延々と書かれており、事情を知らない人にとっては全く意味が分からないような状態でした。)
3.その後の急転換と今後注目すべき点についてこのまま泥沼状態が続くかと思われた2010年7月、事態は急転します。なんとminoriとNNLとの間で、話し合いが行われることになったのです。
丁度この頃、MangaGamerはかなりの規模で
アメリカのアニメイベントに出展しており、そこでminoriの作品をほのめかす発言があったようで、突然の話し合いの裏には、minoriの代表nbkz氏と親しく、MangaGamerへのタイトル提供にも積極的なOVERDRIVEのbamboo氏、ファンサブグループへの影響力をもつMangaGamerのJohn Pickett氏の
後ろ盾があったと考えられます。そして、その後のminoriタイトルの正式な英語版リリースに向けた交渉の結果、(上の画像の通り、)めでたく本日、minoriとMangaGamerとNNLの3者のパートナーシップと、英語版efのリリースが決定したというわけです。ちなみに今回リリースが決定したのは、
・ ef – the First Tale
・ ef – the Latter Tale
の2作品です。
これにより、minoriが直面していたファンサブ問題は円満に解決された訳ですが、懸念していたもう一つの問題、表現規制への対応は、今後も注視してゆく必要があるでしょう。
以下は海外サイトでのminoriの発言(斜体フォントは海外ファンの発言)なのですが、
私たちのゲームは全て日本国内の法令を遵守して制作しており、また日本国外への販売、日本国外での使用は全て禁止しております。もし貴方たちが日本国外でminoriのゲームをプレイしたいということであれば、minoriから翻訳のための正式なライセンスを受け、当該国における倫理審査団体(例えばアメリカであれば、Entertainment Software Rating Boardです)の審査を受けた上で、合法的に翻訳し販売(もしくは頒布)すべきだと考えます。当社はminori本社へいらっしゃって日本語で交渉される場合、その用意があります。–218.219.158.186 13:19, 23 April 2010 (UTC)
Wrong. The ESRB in the US is not needed for PC releases, as companies like JastUSA and Mangagamer do not use it. 134.173.60.163 13:23, 23 April 2010 (UTC)
「間違いだ。アメリカのエンターテインメントソフトウェアレーティング委員会による審査は、PCでのリリースの場合は必要ない。現にJAST USAやMangaGamerは使ってない。」
他社の事情はわかりかねますが、私たちのソフトウェアに関しては必ず当該国の倫理機構団体の審査を受けることを条件にライセンスを提供します。それが当社のポリシーです。私たちは英語版をリリースする予定はありませんが、英語版をリリースしたいと考える会社、グループが正式な手順でコンタクトしてくるのであれば、可能性を閉ざすことはありません。当社は社会的ルールに従って行動することを要求しているのです。–218.219.158.186 13:28, 23 April 2010 (UTC)
ほんの数ヶ月前にこのような発言をしていたminoriが、(今のところ)現地の倫理機構での審査を通していない当のMangaGamerから作品をリリースする事になった訳ですから。
ちなみに、(minoriが行うよりも先に実施していたメーカーもあるのですが、)
IPブロックや、
ファンサブの中止要請は、minoriの行動に追随する形で行動に出た美少女メーカーがいくつかありました。(各リンク先参照)これらのメーカーも同様に相手と和解し、そのうち英語版をリリース…なんて話もあるかもしれません。
(個人的には、
VisualArt'sの動きが気になります。)
(参考リンク等)
公式サイト
minori(海外向けサイト)
MangaGamer(ブログの当該記事)
No Name Losers
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